○豊田市森づくり条例
平成19年3月30日
条例第1号
目次
前文
第1章 総則(第1条~第8条)
第2章 基本的施策(第9条~第16条)
第3章 森づくり構想及び森づくり基本計画(第17条~第19条)
第4章 推進組織(第20条・第21条)
第5章 雑則(第22条~第24条)
附則
豊田市は、平成17年4月、周辺町村との合併により市域の約7割を森林が占めるまちになった。
このうち約半分を占めるひのきや杉の人工林は、木材価格の低迷等により、近年になって適正な管理ができなくなってきた。このまま放置すると、木材を生産する機能だけでなく、土砂流出や山地崩壊の防止、洪水軽減等の公益的機能も損なわれて、平成12年9月の東海豪雨を上回るような災害の可能性が心配される。一方、天然林については、自然環境の保全を始めとする働きが注目されている。
森林を適正に管理するためには、短期的な社会経済環境の変化に惑わされることなく、長期間を見据え、生態系として健全で、災害にも強く、人々の心に安らぎを与えるとともに、地球温暖化の防止にも貢献する森づくりを目指していく必要がある。そのためには、山村地域の住民だけでなく、都市部の住民も共に森づくりに取り組むことが重要である。
私たち豊田市民は、間伐を始めとした適正な管理と木材利用の促進等により、人工林を速やかに整備するとともに、自然豊かな天然林を維持し、森林を市民の財産として次世代に引き継ぐことを決意し、ここに豊田市森づくり条例を制定する。
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、森林の有する公益的機能が強く求められている現状にかんがみ、その機能が高度に発揮される森づくりをするための基本理念を定め、市等の責務及び森林所有者等の役割を明らかにするとともに、森づくりに関する施策その他の取組を総合的かつ計画的に推進することにより、豊かな環境、資源及び文化をはぐくむ森林の保全及び創造並びに次世代への継承に資することを目的とする。
(1) 森林 市内に存する森林法(昭和26年法律第249号)第2条第1項に規定する森林(竹林を含む。)をいう。
(2) 多面的機能 土砂流出及び山地崩壊の防止、洪水軽減等の水源のかん養、自然環境の保全、地球温暖化の防止、保健休養、木材その他の林産物の生産及び供給その他森林の有する多面にわたる機能をいう。
(3) 公益的機能 多面的機能のうち、木材その他の林産物の生産及び供給を除いた機能をいう。
(4) 森づくり 森林の有する多面的機能を持続的に発揮させるため、森林を守り育てるとともに活用することをいう。
(5) 人工林 植栽、種まき又はさし木により成立した森林(伐採跡地を含む。)をいう。
(6) 天然林 人工林以外の森林をいう。
(7) 森林組合 市内に所在する森林組合法(昭和53年法律第36号)に規定する組合をいう。
(8) 森林所有者 森林の土地を所有する者又は森林の土地にある木竹を所有し、若しくは育成することができる者をいう。
(9) 市民 市内に居住し、通勤し、又は通学する個人及び市内において事業若しくは活動を行う個人又は法人その他の団体をいう。
(10) 林業及び木材産業等事業者 市内において森林の施業並びに木材その他の林産物の生産、加工及び流通の事業を行う者(森林組合を除く。)をいう。
(基本理念)
第3条 森づくりは、市、森林所有者、市民等森林にかかわるすべての人々が連携して、この条例の目的を達成するため、次の基本理念(以下「基本理念」という。)により行うものとする。
(1) 森林の有する公益的機能が市民生活の安全及び安心の基盤であることから、自然の仕組を重視した長期的な展望に立ち、生物の多様性に配慮するとともに、立地条件等の特性に応じた適正な森林管理を実施することにより、公益的機能が高度に発揮される森づくりを推進すること。
(2) 林業及び木材産業の健全な発展が人工林の適正な管理に寄与することから、林業及び木材産業を振興することにより、木材資源の循環利用が可能な森づくりを推進すること。
(3) 持続可能な山村地域の再生及び活性化が森づくりに寄与することから、山里の営み並びに歴史及び文化の継承を通じて、地域づくりと一体となって森づくりを推進すること。
(4) 継続的な森林管理を行うためには、多様な人材が必要なことから、森づくりの担い手を育成するとともに、市民との共働による森づくりを推進すること。
(市の責務)
第4条 市は、この条例の目的を達成するため、森づくりに関し総合的かつ計画的な施策の推進に努めなければならない。
2 市は、国、他の地方公共団体及び公共的団体等に対し、必要に応じて理解及び協力を求め、森づくりを円滑に推進しなければならない。
3 市は、森づくりに関する施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めなければならない。
(森林組合の責務)
第5条 森林組合は、基本理念にのっとり、森林の管理の中核的な担い手として、自らの責任において、木材その他の林産物の生産、供給等を通じて森づくりに積極的に取り組まなければならない。
2 森林組合は、当該組合員の森林の管理が適正に行われるように働きかけるとともに、計画的な森づくりを推進するよう努めなければならない。
3 森林組合は、森づくりに関する各種施策に協力するよう努めなければならない。
(森林所有者の役割)
第6条 森林所有者は、森づくりの重要性を深く認識し、所有し、又は育成する森林について、森林の有する多面的機能が十分に発揮される森づくりに努めるものとする。
2 森林所有者は、所有し、又は育成する森林の境界及び木竹の状況を把握し、当該森林の管理方針を明らかにするよう努めるものとする。
3 森林所有者は、森づくりに関する各種施策に協力するよう努めるものとする。
(市民の役割)
第7条 市民は、森林の有する公益的機能が市民共有の財産であることを認識し、森づくりに関する取組に協力し、又は参加するよう努めるものとする。
2 市民は、基本理念にのっとり、地域で生産される木材(以下「地域材」という。)その他の林産物を活用するよう努めるものとする。
(林業及び木材産業等事業者の役割)
第8条 林業及び木材産業等事業者は、その事業の実施に当たっては、基本理念に配慮し、森林の有する公益的機能が十分に発揮される森づくりに努めるとともに、木材その他の林産物の循環利用が可能な森づくりに努めるものとする。
2 林業及び木材産業等事業者は、森づくりに関する各種施策に協力するよう努めるものとする。
第2章 基本的施策
(森林管理の基本方針)
第9条 市は、森林の有する多面的機能を高度に発揮させるため、次の方針に基づき森林管理施策を実施するものとする。
(1) 人工林は、立地条件等による林業の採算性と公益的機能の高度発揮の観点を勘案し、間伐を中心とした適正な管理を重点的かつ計画的に推進する。
(2) 天然林は、植生遷移(地域の植生が時間とともに自然に移り変わっていく現象をいう。)を基本として維持するとともに、市民による活動等を生かしつつ保全及び活用を図る。
(森林の把握)
第10条 市は、森林の有する公益的機能の維持及び回復を図るため、関係行政機関、森林所有者、森林組合等と連携し、森林の現況の把握、森林被害等に関する調査及び対策その他必要な措置を講ずるものとする。
(地域材の利用の拡大)
第11条 市は、地域材の利用の拡大を図るため、住宅等への活用の促進、市民に対する理解の促進、公共事業への利用の推進、加工流通体制整備のための支援その他必要な措置を講ずるものとする。
2 市は、地域材の安定的な供給体制を整備するため、利用可能な木材資源の把握並びに林業生産基盤の整備及びその支援を行うものとする。
(地域づくりと一体になった森づくり)
第12条 市は、魅力ある山村づくりを推進するため、山村地域における就業機会の確保、定住に対する支援、都市と農山村との交流の促進その他必要な措置を講ずるものとする。
2 市は、古くから山村地域に残る知恵、伝承等の森林文化を継承するための取組を支援するものとする。
(共働による森づくり)
第13条 市は、市民との共働による森づくりを推進するため、人工林、天然林を問わず、市民への活動の場の提供、森づくり活動への支援、情報の提供その他必要な措置を講ずるものとする。
2 市は、市民による森づくり活動団体が自発的に行う森づくりが促進されるよう、必要な指導及び支援を行うものとする。
(森づくりの担い手の育成)
第14条 市は、関係行政機関等と連携し、森づくりの担い手となる人材及び事業者の育成を図るため、必要に応じて助言及び支援をするものとする。
(森林環境教育の推進)
第15条 市は、市民が森づくりについて理解及び関心を深めることができるよう、森林環境教育を推進するものとする。
(森づくりの普及啓発)
第16条 市は、市民に対して、森づくりに関する普及啓発を行うものとする。
2 前項に規定する普及啓発を推進するため、10月26日をとよた森づくりの日、10月をとよた森づくり月間と定める。
第3章 森づくり構想及び森づくり基本計画
(森づくり構想)
第17条 市長は、基本理念を実現するための基本構想(以下「森づくり構想」という。)を策定するものとする。
2 森づくり構想には、次の事項を定めるものとする。
(1) 森林の立地条件等の特性に応じた森林の区分及びそれに応じた目標とする森林像
(2) 目標とする森林像を実現するための長期の指針
(3) 木材資源の循環利用のための長期の指針
(4) その他市長が必要と認める事項
3 市長は、必要があると認めたときは、森づくり構想を見直すことができる。
4 市長は、森づくり構想の策定及び見直しに当たっては、あらかじめ森林所有者、市民等の意見を反映することができるよう必要な措置を講ずるとともに、とよた森づくり委員会の意見を聴くものとする。
5 市長は、森づくり構想の策定及び見直しをしたときは、これを公表するものとする。
(森づくり基本計画)
第18条 市長は、森づくり構想を実現するため、おおむね10年間の計画(以下「森づくり基本計画」という。)を策定し、必要な具体的施策を定めるものとする。
2 森づくり基本計画は、おおむね5年ごとに見直すものとする。
(年次報告書)
第19条 市長は、森林の状況、森づくり基本計画に基づき実施された施策の状況等について、年次報告書を作成し、これを公表するものとする。
第4章 推進組織
(とよた森づくり委員会)
第20条 基本理念に基づき森づくりを推進するため、とよた森づくり委員会(以下「委員会」という。)を置く。
2 委員会は、次の事項について協議、調査、提言及び評価を行う。
(1) 森づくり構想及び森づくり基本計画に関すること。
(2) 森づくりに関する基本的な事項に関すること。
(3) 前2号に掲げるもののほか、市長が必要と認めること。
3 委員会は、次に掲げる者のうちから市長が委嘱する委員15人以内をもって組織する。
(1) 学識経験を有する者
(2) 森林所有者、森林組合並びに林業及び木材産業等事業者
(3) 公募による市民
(4) その他市長が適当と認める者
4 委員の任期は、2年とする。ただし、再任を妨げない。
5 前項本文の規定にかかわらず、委員が欠けた場合の補欠委員の任期は、前任者の残任期間とする。
6 前各項に定めるもののほか、委員会の組織及び運営に関し必要な事項は、規則で定める。
(地域組織)
第21条 森林所有者及び市民は、必要に応じて集落等の単位において、その地域の森林の整備及び管理のための地域組織を設置することができる。
2 森林所有者及び市民は、前項の地域組織を設置したときは、規則で定めるところにより、その旨を市長に届け出るものとする。
3 市は、第1項の地域組織の活動を支援するものとする。
第5章 雑則
(立入調査)
第22条 市長は、この条例の施行に必要な調査のため、職員を森林に立ち入らせることができる。
2 前項の規定により立入調査をする職員は、身分を示す証明書を携帯し、関係者に提示するものとする。
(採取等の禁止)
第23条 何人も、森林に立ち入り、みだりに動植物等を採取したり、ごみを捨てたりしてはならない。
(委任)
第24条 この条例に定めるもののほか、必要な事項は、市長が別に定める。
附則
(施行期日)
1 この条例は、平成19年4月1日から施行する。