○豊田市防災基本条例

平成25年10月2日

条例第38号

目次

前文

第1章 総則(第1条~第8条)

第2章 予防対策(第9条~第15条)

第3章 応急復旧対策(第16条~第20条)

第4章 復興対策(第21条)

第5章 応援協力(第22条・第23条)

第6章 雑則(第24条)

附則

本市では、昭和47年7月豪雨や平成12年東海豪雨など、市民の生命や財産に大きな被害をもたらした災害が度々発生してきた。また、南海トラフの巨大地震などの地震の発生が危惧されており、これまでの災害を超える甚大な被害を受けるおそれがある。平成23年3月に発生した東日本大震災では、想定を超える未曽有の被害が発生し、行政による災害対応の限界が明らかになる一方で、地域社会による助け合いの重要性が改めて認識された。

広大な市域を持つ本市で、災害から市民の生命と暮らしを守るためには、自らのことは自らが守る自助の理念、地域において助け合いお互いを守る共助の理念及び市が市民及び事業者を災害から守る公助の理念に基づき、市民、事業者及び市が相互に連携し、協力し合い、継続して防災対策及び減災対策に取り組むことが必要不可欠である。また、市域を越えた広域で被害を受けた際には、内陸部に位置することや高規格道路等の交通の便の良い立地条件を生かして、本市が、他の地方公共団体の支援のための拠点としての役割を担っていく必要がある。

それらを実現するためには、地域社会における防災活動の基盤となる人と人とのきずなを大切にし、地域コミュニティの維持及び発展に取り組んでいかなければならない。

ここに、市民、事業者及び市が適切な役割分担の下、共働して地域防災力の更なる向上を図り、一体となって災害に立ち向かう決意を表明するため、この条例を制定する。

第1章 総則

(目的)

第1条 この条例は、災害対策に関する市民、事業者及び市の責務を明らかにするとともに、市民の生命、身体及び財産を守る上で必要な基本理念並びに災害の予防対策、応急復旧対策、復興対策及び応援協力に関する基本的事項を定めることにより、災害対策を総合的かつ計画的に推進し、被害を最小限にとどめ、もって市民が安全で安心して暮らすことのできる災害に強いまちを実現することを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

(1) 災害 暴風、竜巻、豪雨、豪雪、洪水、崖崩れ、土石流、地震、地滑りその他の異常な自然現象又は大規模な火事、爆発等により生ずる被害をいう。

(2) 市民 市内に居住し、通勤し、又は通学する個人をいう。

(3) 自主防災組織 災害対策基本法(昭和36年法律第223号。以下「法」という。)第5条第2項に規定する自主防災組織をいう。

(4) 防災関係機関 警察、法第2条第4号に規定する指定地方行政機関、自衛隊、同条第5号に規定する指定公共機関、同条第6号に規定する指定地方公共機関及び地域防災計画(法第42条第1項の規定により豊田市防災会議(法第16条第1項の規定により設置したものをいう。以下同じ。)が作成した豊田市地域防災計画をいう。以下同じ。)で定める公共的団体をいう。

(5) 要配慮者 法第8条第2項第15号に規定する要配慮者をいう。

(6) 避難所 避難のための立退きを行った居住者、滞在者その他の者を避難のために必要な間滞在させ、又は自ら居住の場所を確保することが困難な被災した市民その他の被災者を一定期間滞在させるための施設をいう。

(7) 避難場所 災害が発生し、又は発生するおそれがある場合における円滑かつ迅速な避難のために一時的に滞在する施設又は場所をいう。

(8) 帰宅困難者 事業所、学校等に通勤し、通学し、又は来所する者で災害の発生により帰宅することが困難になったものをいう。

(基本理念)

第3条 市民、事業者及び市は、次に掲げる理念に基づき、それぞれの責務と役割を果たし、共働により継続的に災害対策を充実させるよう努めなければならない。

(1) 自らのことは自らが守る自助の理念

(2) 地域において助け合いお互いを守る共助の理念

(3) 市が市民及び事業者を災害から守る公助の理念

(地域防災計画への反映)

第4条 豊田市防災会議は、法第42条第1項の規定により地域防災計画を修正する場合は、前条に規定する基本理念を反映させなければならない。

(市民の責務)

第5条 市民は、自己及び家族の安全の確保に努めるとともに、地域の一員として協力し、相互の安全の確保に努めなければならない。

2 市民は、国、県、市及び防災関係機関が実施する災害対策に協力するよう努めなければならない。

3 市民は、自ら災害に備えるため、平常時から次に掲げる事項を実施するよう努めなければならない。

(1) 所有し、又は管理する建築物及び工作物(以下「建築物等」という。)の耐震性の確認、耐震改修の実施その他の対策

(2) 家具の転倒の防止

(3) 災害時における初期消火、被災者の救助、応急手当その他の初期活動を円滑に行うための準備

(4) 食品、飲料水その他の生活必需物資の備蓄

(5) 外出先からの帰宅方法及び家族間の連絡方法の確認

(6) 避難所及び避難場所並びに避難の経路及び方法の確認

(7) 前各号に掲げるもののほか、日常の災害対策に関し必要な事項

(事業者の責務)

第6条 事業者は、従業員及び事業所に来所する者並びに管理する施設及び設備の安全の確保に努めなければならない。

2 事業者は、地域の一員として協力し、事業所の周辺地域における市民の安全の確保に努めなければならない。

3 事業者は、自ら災害に備えるため、平常時から次に掲げる事項を実施するよう努めなければならない。

(1) 所有し、又は管理する建築物等の耐震性の確認、耐震改修の実施その他の対策

(2) 事業活動で使用する物品、機器設備等の転倒の防止

(3) 災害時における初期消火、被災者の救助、応急手当その他の初期活動を円滑に行うための準備

(4) 災害時に従業員及び事業所に来所する者を一時的に待機させる場所の確保

(5) 食品、飲料水その他の災害時において必要となる物資の備蓄

(6) 避難所及び避難場所並びに避難の経路及び方法の確認並びに従業員及び事業所に来所する者への周知

(7) 災害時における情報の収集及び伝達の方法に係る確認及び確保並びにその方法の従業員及び事業所に来所する者への周知

(8) 被災後に事業を早期に再開し、及び継続するための計画の策定及び災害に対する危機管理体制の整備

(9) 前各号に掲げるもののほか、日常の災害対策に関し必要な事項

(市の責務)

第7条 市は、市民の生命、身体及び財産並びに事業者の財産を災害から守るとともに、被害を最小限にとどめるため、次に掲げる施策を実施しなければならない。

(1) 災害対策に関する計画の策定及び必要な体制の整備

(2) 国、県及び防災関係機関並びに市民、自治区、自主防災組織及び事業者と連携した災害対策の実施

(3) 被災者の支援のための体制の整備

(4) 市民及び事業者の防災意識の高揚及び災害に対する対応力の向上のための啓発活動

(5) 建築物の耐震診断及び耐震改修に関する指導、助言及び支援

(6) 市が所有する建築物の必要に応じた耐震診断及びその結果に基づく耐震改修の実施

(7) 市が管理する道路、橋りょう、河川、排水路施設、上下水道施設等の安全の確保

(8) 避難者等に必要な食品、飲料水その他の物資の備蓄

(9) 前各号に掲げるもののほか、災害対策の推進に関し必要な事項

(議会の責務)

第8条 議会は、国及び県の動向を踏まえつつ、広大な市域を持つ本市の多様な地域特性を勘案した災害対策に関する必要な調査及び研究並びに市長への助言及び提言を行うよう努めなければならない。

2 議会は、市内の被害の状況に関する情報を収集し及び整理し、並びに市長に提供するとともに、市長と協力し災害に関する必要な情報を市民に発信するよう努めなければならない。

3 議会は、市長と協力し国及び県への働きかけを行い、災害の予防対策、復旧対策及び復興対策の推進に努めなければならない。

第2章 予防対策

(災害に強いまちづくりの推進)

第9条 市は、道路、河川、公園等の都市基盤の整備、市街地の再整備その他の事業を通じて、災害に強いまちづくりを総合的に推進するものとする。

(防災に関する知識の普及等)

第10条 市は、防災に関する知識の普及及び情報の提供を積極的に推進し、市民及び事業者の防災意識の高揚を図るものとする。

2 市は、防災に関する市民の理解を深め、防災活動を支える人材を育成するため、学校教育その他の機会を通じ、防災に関する知識及び技術の習得に資するための教育を充実させるものとする。

3 市は、自治区、自主防災組織、事業所等が行う防災に関する啓発活動に対し、必要な支援を行うものとする。

4 市は、防災訓練、防災に係る研修等の実施により、職員の防災に関する知識を深めるとともに、技術の向上を図るものとする。

5 市民は、平常時から防災に関する知識及び技術を習得するとともに、防災意識の高揚に努めるものとする。

6 市民、自治区及び自主防災組織は、過去の災害に関する教訓及び先人からの災害に関する伝承を後世へと引き継ぐよう努めるものとする。

7 事業者は、防災訓練、防災に係る研修等の実施により、従業員が防災に関する知識及び技術を習得する機会を提供するよう努めるものとする。

(自主的な防災活動の推進)

第11条 市は、市民、自治区、自主防災組織その他防災に関する活動を行う団体が地域において自発的かつ組織的に行う防災に関する活動(以下「自主防災活動」という。)を推進するため、積極的に支援及び協力を行うものとする。

2 市民は、自主防災活動を推進するため、その活動に積極的に参加し、又は協力するよう努めるものとする。

3 事業者は、自主防災活動を積極的に推進するため、その活動に協力するよう努めるものとする。

4 自治区、自主防災組織、消防団その他防災に関する活動を行う団体及び民生委員法(昭和23年法律第198号)に規定する民生委員(以下「民生委員」という。)は、災害時の対応を円滑に行うため、平常時から連携を図るよう努めるものとする。

(災害に係るボランティア活動の推進)

第12条 市及び社会福祉法人豊田市社会福祉協議会(以下「社会福祉協議会」という。)は、災害時においてボランティア活動が円滑に行われるよう、活動拠点の提供その他必要な支援により、災害に係るボランティア活動の環境整備に努めなければならない。

2 市及び社会福祉協議会は、平常時から県及び特定非営利活動法人その他の団体との連携を図り、災害に係るボランティア活動の啓発及びボランティアの育成に努めなければならない。

(要配慮者への支援)

第13条 市は、要配慮者に配慮し、避難所のバリアフリー化、物資の備蓄その他の支援対策を行うものとする。

2 自治区、自主防災組織、消防団その他防災に関する活動を行う団体及び民生委員は、相互に協力して要配慮者の支援に努めるものとする。

3 要配慮者は、自らの住まいの安全の確保に努めるとともに、避難の支援を受けるために必要な情報の提供、近隣との交流及び地域の関係団体、福祉関係者等との関係づくりに努めるものとする。

4 市は、要配慮者への支援を促進するため、法第49条の11第2項の規定に基づき、法第49条の10第1項に規定する避難行動要支援者として地域防災計画で定める者の名簿又は当該名簿に記載し、若しくは記録された情報(以下「名簿情報」という。)を避難支援等関係者に対し提供するものとする。

5 前項の規定により、名簿情報の提供を受けるものは、避難行動要支援者の支援を円滑に行うための体制の整備に努めなければならない。

6 第4項の規定により名簿情報の提供を受けたものは、当該名簿情報を適正に管理するとともに、正当な理由なく避難行動要支援者に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。

(情報収集及び提供)

第14条 市は、災害に関する情報基盤を整備し、防災のために必要な情報を収集し、及び伝達する方法を確保するものとする。

2 市は、市内で予想される災害に関する情報を収集し、災害対策に反映するものとする。

3 市は、市民、自治区、自主防災組織及び事業者に対し、あらかじめ、避難所及び避難場所の位置その他避難するために必要な情報を提供するものとする。

4 市民、自治区、自主防災組織及び事業者は、災害時に適切な行動をとるため、防災に関する情報を自ら積極的に収集するよう努めるものとする。

(災害の防止対策の推進)

第15条 市は、災害を未然に防止し、災害が発生した場合における被害の拡大を防ぐとともに、市民の安全を確保するために必要な対策を講ずるものとする。

2 市内の土地の所有者又は管理者は、当該土地の適切な管理に努めるものとする。

3 市内の建築物等の所有者又は管理者は、当該建築物等の安全の確保に努めるものとする。

4 市内の森林の所有者又は管理者は、森林の持つ公益的機能が発揮されるよう当該森林の適正な整備及び保全に努めるものとする。

5 市内の屋外広告物、建築物の屋外に面している壁面タイルその他災害時において落下のおそれのある物(この項において「落下対象物」という。)及び道路その他の公共の場所に沿って設けられているブロック塀、自動販売機その他災害時において転倒のおそれのある物(この項において「転倒対象物」という。)を所有し、又は管理する者は、当該落下対象物の落下の防止及び当該転倒対象物の転倒の防止に努めるものとする。

6 市は、第2項から前項までに規定する措置を講ずる者に対し、必要に応じて助言又は指導を行い、又は報告を求めることができる。

第3章 応急復旧対策

(応急復旧活動)

第16条 市は、災害時における救援活動及び迅速な応急復旧活動を行うため、国、県及び防災関係機関と連携して必要な措置を講ずるものとする。

2 市は、災害が発生し、又は発生するおそれがある場合において、市民、自治区、自主防災組織及び事業者に対し、直ちに、避難及び被害の状況、応急措置等に関する情報を提供するものとする。

(災害時の活動)

第17条 市、市民、自治区、自主防災組織、消防団、民生委員、特定非営利活動法人その他の団体及び事業者は、災害時においては、相互に連携し及び補完して、次に掲げる事項を実施するよう努めるものとする。

(1) 災害に関する情報の収集及び伝達

(2) 出火防止及び初期消火

(3) 被災者の救出、救護、搬送等

(4) 要配慮者への支援

(5) 帰宅困難者への支援

(6) 前各号に掲げるもののほか、災害時の応急対応に関し必要な事項

2 市民、自治区、自主防災組織、民生委員、特定非営利活動法人その他の団体及び事業者は、災害時に市が講ずる措置に積極的に協力するよう努めるものとする。

(避難対策)

第18条 市は、食品、飲料水その他の被災した市民の生活に必要な物資の確保及び供給のために必要な措置を講ずるものとする。

2 市は、避難所及び避難場所を確保し、及び整備するものとする。

3 市民は、防災関係機関からの災害に関する情報の収集に努め、危険を認知したときは、自主的に避難するとともに、市から避難に関する情報の提供があったときは、これを考慮して自らの身の安全を確保するよう努めるものとする。

4 自治区、自主防災組織、消防団その他防災に関する活動を行う団体及び民生委員は、相互に連携し、災害時における市民の避難誘導に努めるものとする。

5 市民は、相互に協力し、避難所を円滑に運営するよう努めるものとする。

(緊急輸送対策)

第19条 市は、災害時又は東海地震に関する警戒宣言の発令時において、消火、被災者の救助その他の応急対策を的確かつ円滑に実施するための緊急輸送(以下「緊急輸送」という。)を確保するため、道路の啓開及び車両その他の輸送手段の調達に関し対策を講ずるとともに、国、他の地方公共団体及び関係団体との調整を行うものとする。

2 前項の場合において、市民及び事業者は、自動車の使用の自粛等により緊急輸送の確保に協力するよう努めなければならない。

(帰宅困難者対策)

第20条 市は、帰宅困難者に対し、避難及び帰宅のための情報の提供その他の必要な支援を行うものとする。

2 事業者は、従業員の円滑な帰宅及び帰宅困難者の安全の確保のために必要な対策を講ずるよう努めるものとする。

3 帰宅困難者は、自らの安全を確保するため、むやみに移動しないよう努めるとともに、市及び事業者が講ずる措置に協力するよう努めるものとする。

第4章 復興対策

第21条 市は、災害により甚大な被害を受けた場合において、市民生活の再建及び安定を図るため、国、県及び防災関係機関と連携を図りながら災害復興の事業計画を策定し、被災した区域の復興に関する事業を行うものとする。

2 前項の場合において、市民、自治区、自主防災組織及び事業者は、相互に協力し速やかに、市民生活及び事業活動を再建し、及び被災した区域の復興を図るよう努めるものとする。

3 市民、自治区、自主防災組織及び事業者は、市の実施する被災した区域の復興事業の推進に協力するよう努めるものとする。

第5章 応援協力

(協定の締結)

第22条 市は、災害時に他の地方公共団体、公共的団体、事業者等に対し、協力の要請を迅速かつ円滑に行うことができるよう、あらかじめ、防災に係る協定を締結し、必要な体制を整備するものとする。

(被災地及び被災者に対する支援)

第23条 市は、甚大な被害を受けた被災地及び被災者に対し、市民及び事業者の協力を得て、国、県及び防災関係機関と共に必要な支援を行うものとする。

2 市民及び事業者は、国、県、市及び防災関係機関が行う支援に協力するよう努めるものとする。

第6章 雑則

(委任)

第24条 この条例に定めるもののほか、必要な事項は、市長が別に定める。

この条例は、公布の日から施行する。ただし、第13条第4項から第6項までの規定は、規則で定める日から施行する。

(平成26年3月規則第4号で、同26年4月1日から施行)

(平成27年3月26日条例第31号)

この条例は、公布の日から施行する。

豊田市防災基本条例

平成25年10月2日 条例第38号

(平成27年3月26日施行)

体系情報
第12編 防災・消防/第2章 災害対策
沿革情報
平成25年10月2日 条例第38号
平成27年3月26日 条例第31号